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生成AI開発の情報漏洩を防ぐ確認点|機密と事業アイデア

JustFit編集部(運営:株式会社LEGAREA)

生成AIを使った開発では、入力した情報の扱いが、情報漏洩の不安につながりやすくなります。この記事では、漏れる可能性がある経路を整理し、サービス側、開発現場、外部委託のそれぞれで確認したい点をまとめます。まだ公開していない事業アイデアをどう扱うかにも触れます。

生成AIを使った開発で、情報はどこから漏れるのか

「生成AIを使うと情報が漏れる」という言い方は大づかみすぎて、何を確認すればよいのかが見えにくくなります。まずは経路を分けて考えます。開発での利用に絞ると、主に次の6つがあります。

  • 入力した内容そのもの:仕様書、ソースコード、顧客データ、エラーログなどをプロンプト(AIへの指示文)に貼り付ける場合
  • サービス側での取り扱い:入力内容が保管される期間、学習に使われるかどうか、運営側の担当者が閲覧できるかどうか
  • ログや履歴の管理:会話履歴が個人のアカウントに残り、退職や異動のあとも残り続ける場合
  • ツール連携とAIエージェントの権限:AIがファイル、リポジトリ、社内システム、ブラウザに触れられる範囲が広すぎる場合
  • 生成物への混入:生成されたコードやドキュメントに、APIキーやパスワード、内部の情報が入り込む場合
  • 外部の委託先:開発を委託した先で、AIがどのように使われているかが見えていない場合

この6つは、対策を打つ場所が違います。サービスの設定や契約で決まるものもあれば、社内ルールで防げるものも、権限の設計で防げるものもあります。「AIを使うか使わないか」という二択にせず、経路ごとに確認すると、現実的な対策に落とし込みやすくなります。

なお、リスクを完全になくすことはできません。目指すのは、守るべき情報と、そのために許容できる範囲を先に決めておくことです。

守る対象を先に分ける:機密情報・個人情報・事業アイデア

「情報」とひとまとめにせず、性質ごとに分けておくと、ルールが作りやすくなります。

営業秘密にあたる情報

不正競争防止法では、営業秘密として保護されるには、一般に次の3つの要件を満たす必要があるとされています。

  • 秘密管理性:秘密として管理されていること
  • 有用性:事業活動に役立つ情報であること
  • 非公知性:一般に知られていないこと

ここで気をつけたいのは、秘密として管理している実態です。「入力してはいけない」という決まりがなく、誰でも自由に外部のサービスへ入力できる状態では、秘密として管理しているとは言いにくくなる可能性があります。具体的な法的判断は個別の状況によるため、重要な情報については弁護士など専門家への確認が安心です。

個人情報

顧客や従業員の個人情報を扱う場合は、個人情報保護法の対象になります。個人情報保護委員会は2023年に、生成AIサービスの利用について注意喚起を公表しています。個人情報を入力する場合は、利用目的の範囲内かどうかや、入力した内容がAIの回答を出す以外の目的で扱われないかを確認するよう促す内容です。公表内容は更新されることがあるため、実際に運用を決める際は、同委員会の最新の公表資料を直接確認するのが確実です。

開発の場面では、本番データをそのまま入力せず、ダミーデータや匿名化したデータで代用するのが基本になります。

まだ公開していない事業アイデア

新規事業では、この3つ目がいちばん扱いにくい部分です。ソースコードや顧客データのように明確な区分がなく、企画書、市場の見立て、サービスの仕組み、他社との差別化の考え方など、あいまいな形で存在しているためです。

事業アイデアは、それ自体が競争力の源泉になる場合があります。一方で、AIに相談すると、壁打ちや要件の整理がしやすくなるのも事実です。そこで、アイデアを次のような粒度に分けて、入力してよい範囲を決める方法が考えられます。

  • 一般化した形:業界名や固有の数字を外し、「予約型のマッチングサービス」のように抽象化した説明
  • 構造だけの形:画面の流れやデータの項目など、仕組みの骨格だけを示した説明
  • 固有の核心部分:差別化の根拠となる独自の仕組みや条件、未公開の取引先・数字を含む説明

最初の2つは、条件を満たすサービスであれば入力してよい、核心部分は入力しない、といった線引きを社内で決めておくと、迷いが減ります。

生成AIサービス側で確認したい5つのこと

利用するサービスの取り扱いは、サービスごと、またプランごとに条件が異なる場合があります。個人向けのプランと法人向けのプランで、データの扱いが違うことも珍しくありません。ここでは、一般的に確認したい項目を挙げます。最新の条件は、各社の公式ドキュメントや利用規約で直接確認するのが前提です。

1. 入力内容が学習に使われるか

入力したプロンプトや生成結果が、モデルの改善や学習に使われるかどうかです。使われる設定になっているのか、設定で止められるのか、止めた場合の範囲はどこまでかを確認します。

2. 保管期間と削除の方法

入力内容や会話履歴が、どのくらいの期間サービス側に保管されるか、利用者の操作で削除できるかを確認します。契約を終了したあとの扱いも確認項目に入ります。

3. データの保管場所と委託先

データがどの国や地域で処理・保管されるか、再委託先があるかどうかです。社内の規程や取引先との契約によっては、保管地域に条件がつく場合があります。

4. アクセス管理と監査の仕組み

誰が利用できるかを、会社として管理できるかを確認します。シングルサインオン(社内の共通アカウントでログインする仕組み)に対応しているか、利用ログを管理者が確認できるか、退職者のアカウントを止められるか、といった点です。個人が各自でアカウントを作って使う状態は、管理の面でいちばん見えにくくなります。

5. 契約上の位置づけ

利用規約やデータの取り扱いに関する契約書面で、入力データの権利や秘密保持がどう書かれているかを確認します。会社として利用するなら、個人向けの規約のまま使うのではなく、法人としての契約条件を確認したいところです。

どのサービスを使うかによって確認の結果は変わります。開発向けの生成AIそのものの特徴や違いは、開発向け生成AI比較|Claude・ChatGPT・GeminiやAIコーディングツール比較|特徴と向く使い方|2026年10月で整理しています。システムにAIを組み込む場合の選び方は、AIシステム開発でのAIの選び方|2026年10月比較も参考になります。

自社の環境で動かす選択肢

クラウドのサービスに入力すること自体を避けたい場合には、自社の管理下の環境で動かす形も選択肢になります。最近は、セルフホスト(自社で用意した環境に設置して使う形)に対応した製品や、重みを公開しているモデルの発表も出ています。たとえばIBM Bobセルフホスト版発表やMuse Spark Openの重み公開、商用は条件つきなどです。

ただし、自社環境にすれば安全になるというわけではありません。環境の構築、アクセス管理、更新、監視は自社で行うことになるため、その体制を持てるかも判断材料になります。公開されている重みの利用条件も、確認が必要です。

開発の現場で決めておきたいルール

サービスの条件を確認しても、現場の使い方が曖昧なままでは、情報は守れません。次のような点を、最初に文書にしておくと運用しやすくなります。

入力してよい情報の区分を決める

先ほど触れた情報の性質に応じて、区分を作ります。たとえば次のように3段階に分けるだけでも、判断がしやすくなります。

  • 入力してよい:公開情報、一般化した相談内容、ダミーデータ
  • 承認されたサービスのみ入力してよい:社内のコードの一部、構造だけを示した仕様
  • 入力しない:個人情報、認証情報、未公開の取引先情報、差別化の核心部分

区分は細かくしすぎないほうが、現場で守られやすくなります。

認証情報をAIとリポジトリに渡さない

APIキー、パスワード、秘密鍵、接続文字列などは、プロンプトにも、AIに読ませるファイルにも含めないのが基本です。ソースコード上に直接書かず、環境変数やシークレット管理の仕組みに置き、AIが読み取れる範囲から外します。

万が一、入力してしまった場合の手順(キーの無効化と再発行、関係者への連絡)も、あらかじめ決めておきます。後から探すのではなく、起きたときにすぐ動ける形にしておくことが重要です。

AIエージェントの権限を絞る

最近のAI開発ツールは、コードの提案だけでなく、ファイルの編集やコマンドの実行、外部サービスの操作まで自動で行えるものが増えています。便利な反面、AIが触れられる範囲が広いほど、意図しない情報の持ち出しや操作が起こる可能性も高まります。

  • 読み取れるフォルダやリポジトリを、作業に必要な範囲に限る
  • 本番環境や顧客データへの接続を、開発用のAIには与えない
  • 実行前に人が承認する操作の範囲を決める
  • 外部のサイトやサービスへ送信される内容を確認できるようにしておく

AIエージェントの権限を制限する仕組みについては、MXCが正式版に、AIエージェントの権限をOSで制限で紹介しています。AIが想定外の動作をした報告や、AI関連ツールの脆弱性の実演も出ています。Claudeが実サイトで想定外の操作、Anthropicが報告とPwn2OwnでCodexとLiteLLMの脆弱性を実演も、権限や連携先を見直す際の参考になります。

生成されたコードを人が確認する

情報漏洩は、入力する側だけの問題ではありません。生成されたコードが、脆弱性を含んだり、認証情報を埋め込んだり、意図しない外部通信を行ったりする可能性もあります。AIが書いたコードを、そのまま本番に出さず、人がレビューする工程を残しておくことが、情報を守ることにもつながります。

AIのコードの安全面については、AI生成コードのセキュリティ|確認点と人の役割で詳しく取り上げています。また、安全性と動作の両立を測るベンチマークの公開は、LSCBench公開、AIのコードは安全と動作の両立が最良25%で紹介しています。品質面で人が確認する意味は、AI開発でも品質には人の確認が必要な理由にまとめました。

利用状況を把握できる状態にする

ルールを作っても、使われ方が見えなければ形骸化します。どのサービスを、誰が、どの用途で使っているかを、会社として把握できる状態にしておきます。承認済みのサービスを案内しておくと、各自が個人で別のサービスを使う、いわゆる「隠れた利用」も減らしやすくなります。

外部の開発会社に委託するときの確認点

新規事業では、社内にエンジニアがいない場合や、早く形にしたい場合に、開発を外部へ委託することがあります。委託先がAIを活用する開発をしている場合は、情報の扱いについて、一般的な秘密保持の確認に加えて、次の点も確認したいところです。

  • どの工程でAIを使うのか:要件整理、設計、実装、テスト、レビューなど、AIが関わる範囲
  • こちらの情報がAIに入力されるか:入力される場合、どのサービスに、どの範囲まで入力されるのか
  • 入力先サービスの条件:学習への利用、保管期間、保管地域など、前述の5つの確認項目に沿った説明があるか
  • ルールと体制:AIの利用に関する社内ルールがあるか、担当者の範囲が決まっているか
  • 再委託の有無:さらに別の会社や個人に作業が渡るかどうか
  • 終了時の扱い:契約の終了後に、預けた情報やデータをどう削除・返却するか
  • 成果物の権利:納品物の権利が誰に帰属するか(システム開発の著作権帰属は誰のもの?契約前の確認点で整理しています)

こうした確認は、開発会社を疑うためのものではなく、お互いの前提をそろえるためのものです。聞かれたときに説明できる会社であるかどうかは、選ぶ際の判断材料にもなります。委託先を選ぶ視点はシステム開発会社の選び方|新規事業で失敗しない7つの視点に、AIを使う受託開発に依頼する前の確認事項はAI受託開発に依頼する前に確かめたい6つのことにまとめています。

アイデアは段階的に開示する

事業アイデアを守る方法として、情報を出す順番を決めておく方法もあります。最初の相談では、目的、想定する利用者、解決したい課題といった概要にとどめます。そのうえで、秘密保持の取り決めを交わしてから、仕組みの骨格や業務の流れなどの具体的な内容を共有します。差別化の核心にあたる部分は、本当に開発側が知る必要があるのかを見極めたうえで、最後に判断します。

開発に必要な情報と、渡さなくてもよい情報は、必ずしも一致しません。何を渡さなければ開発が進まないのかを、委託先と相談しながら決めていくと、守りたい情報と進めやすさの両立がしやすくなります。

確認事項の整理

ここまでの内容を、実際に確認するときのチェックリストとして整理します。

サービスと契約

  • 利用するAIサービスの、学習・保管・削除・保管地域の条件を確認したか
  • 法人として管理できる契約とアカウントの形になっているか
  • 管理者が利用状況を確認できるか

社内ルール

  • 入力してよい情報と、入力しない情報の区分を決めたか
  • 認証情報や個人情報を、AIとリポジトリから切り離したか
  • 誤って入力した場合の対応手順があるか

開発の運用

  • AIエージェントの権限を、必要な範囲に絞っているか
  • 本番データや本番環境にAIを接続していないか
  • 生成コードを人がレビューする工程が残っているか

外部委託

  • 委託先のAI利用の範囲と、入力先のサービスを把握しているか
  • 秘密保持と、再委託、削除・返却の取り決めがあるか
  • アイデアを段階的に開示する方針を決めたか

すべてを最初から完璧に整える必要はありません。優先して決めたいのは、入力してよい情報の区分と、利用するサービスの条件の確認です。この2つが決まると、残りの項目も判断しやすくなります。

まとめ

生成AIを使った開発での情報漏洩は、入力した内容、サービス側の取り扱い、履歴の管理、エージェントの権限、生成物への混入、外部委託という、複数の経路に分けて考えると対策が見えやすくなります。サービス側の条件はプランや時期によって変わることがあるため、公式の資料で現時点の内容を確認することが前提になります。

新規事業では、事業アイデアが最も扱いにくい情報です。一般化した形、構造だけの形、核心部分というように粒度を分け、入力してよい範囲を決めておくことで、AIの利便性を活かしながら守るべきものを守りやすくなります。外部へ委託する場合も、AIの利用範囲や再委託、終了時の扱いを事前に確認し、情報を段階的に開示することが有効です。

JustFitは、株式会社LEGAREAが運営する受託開発サービスで、AIを活用した独自の開発基盤「LAF」を使い、構想をもとに約1ヶ月で動くプロトタイプを先に開発します。AIを使う開発では、情報の扱いも発注前に確認したい大切な点だと私たちは考えています。仕様や進め方が固まっていない段階でも相談を受けられますので、事業の構想を伺ったうえで進め方を一緒に整理できます。詳しくはJustFitのサービス紹介をご覧ください。

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