AIエージェントが開発チームになる仕組みと発注の要点
「AIエージェントが開発チームのように動く」という説明を目にする機会が増えました。ただ、実際に何が起きているのか、人が行う開発チームとどこが違うのかは、分かりにくいままではないでしょうか。
この記事では、複数の専門AIがチームで開発するとはどういうことかを、役割分担・成果物の受け渡し・人の確認という3つの視点で整理します。あわせて、新規事業でこの開発方法を使うときに、発注する側が確かめておきたい点もまとめます。
AIエージェントとは何か:単発の質問との違い
最初に、言葉をそろえておきます。
ChatGPTやClaudeのようなAIに質問して回答をもらう使い方は、基本的に「1回の問いに1回の答え」です。回答の内容をどう使うかは、人が決めます。
一方、AIエージェントは、目的を与えられると、そこに至る手順を自分で分解し、道具(ファイルの編集、プログラムの実行、情報の検索など)を使いながら、結果を見て次の行動を決めて進めるAIの使い方を指します。「エージェント」は「代理人」という意味で、人が細かく指示しなくても、ある範囲の作業を任せられる点が特徴です。
開発の場面でいえば、次のような違いになります。
- 質問型:「この関数のバグの原因は?」と聞き、回答を人が読んで修正する
- エージェント型:「この機能を追加して」と頼むと、既存のコードを読み、必要な修正を加え、動作を確認し、結果を報告する
エージェント型は、一度に任せられる作業の範囲が広がります。その一方で、任せた範囲が広いほど、途中の判断がどうなっていたのかを確かめにくくなります。この点は、後の章で扱う「チームにする意味」と深く関わります。
個別のコーディング支援ツールの違いについては、「AIコーディングツール比較|特徴と向く使い方|2026年10月」で整理しています。
「チームで開発する」とは何か
1つのAIに全部任せると起きやすいこと
エージェント型のAIが1つあれば、要件の整理から実装、テストまで1つに任せることもできます。ただ、作業が長くなるほど、次のような困りごとが起きやすくなります。
- 序盤で決めた前提を、後半の作業で取り違える
- 「作る役」と「確かめる役」が同じなので、自分の出力の誤りに気づきにくい
- 要件の整理、設計、実装といった性質の違う仕事が1つの指示に混ざり、どれも中途半端になる
人間の開発でも、1人が企画・設計・実装・検証をすべて抱え込むと、見落としが増えます。これと同じ発想で、役割を分けるのが「チーム」という考え方です。
役割ごとに専門のAIを用意する
複数の専門AIによるチーム開発では、工程ごとに別のAIを用意し、それぞれに役割・守るべき基準・出力の形式を与えます。たとえば、次のような分け方です。
| 役割 | 主な仕事 | 次の工程に渡すもの |
|---|---|---|
| 要件定義 | 作りたいものを機能として整理する | 要件の一覧 |
| 設計 | 全体の構成や画面・処理の流れを決める | 設計書 |
| DB設計 | データの持ち方を決める | テーブル定義 |
| 実装 | 設計に沿ってプログラムを書く | 動くコード |
| テスト | 要件どおりに動くかを確かめる | テスト結果 |
| レビュー | 品質や設計との食い違いを点検する | 指摘事項 |
土台になるのはGPTやClaudeなどのLLM(大規模言語モデル。文章やコードを生成する「頭脳」にあたるAI)です。同じLLMでも、与える役割と基準が違えば、振る舞いが変わります。要件定義役には「抜け漏れと矛盾を探す」、レビュー役には「設計書と実装の食い違いを探す」といった観点を与えるイメージです。
受け渡しは「成果物」で行う
チームとして機能するかどうかは、工程の間で何を受け渡すかで決まります。人間のチームが議事録や設計書を介して連携するように、AIのチームも、文書や定義書といった成果物を介して引き継ぎます。
- 前の工程の成果物が、次の工程の入力になる
- 後工程で食い違いが見つかれば、前工程に差し戻す
- 全体の進行を管理する仕組み(オーケストレーションと呼ばれます)が、順序や差し戻しを制御する
成果物が文書として残るので、「なぜこの実装になったのか」をあとからたどれます。この追跡のしやすさは、チームにすることの大きな利点です。
役割を分ける理由と、分けても残る課題
分けることで得られるもの
役割を分ける理由は、主に4つあります。
- 指示を絞れる:1つのAIに与える指示が短く明確になり、狙いがぶれにくい
- 作る側と確かめる側を分けられる:実装した本人とは別の役割がレビューするため、見落としに気づく機会が増える
- 記録が工程ごとに残る:途中の判断を後から確認しやすい
- 人が確認する地点を置きやすい:工程の区切りで、人が内容を見て進めるかどうかを判断できる
こうした分業は、人の開発チームが長年取り入れてきた工夫を、AIに当てはめたものといえます。
分けても残る課題
一方で、チームにすれば万全というわけではありません。私たちが注意しておきたいのは、次の点です。
- 前提のずれが後工程に伝わる:最初の要件にずれがあると、設計も実装も、そのずれを前提に進んでしまう
- もっともらしい誤りが起きる:AIは、誤った内容でも自然な文章やコードとして出力することがあり、複数のAIが同じ誤りを引き継ぐ可能性もある
- 全体の整合は自動では保証されない:個々の成果物が正しく見えても、組み合わせると噛み合わないことがある
- 速く進む分、間違いも速く積み上がる:人の確認がないまま進むと、後で大きな手戻りになる
特に、要件の段階のずれは影響が大きくなります。要件定義で起きやすい抜け漏れや食い違いについては、「要件定義とは?新規事業で抜け漏れとズレを防ぐ進め方」で詳しく扱っています。
AIが関わる開発で、なぜ人の確認が欠かせないのかは、「AI開発でも品質には人の確認が必要な理由」にまとめています。AIの数を増やすだけでは、品質の最終的な責任をAIに移すことはできない、というのが私たちの考えです。
人が担う役割:何を作るかと、品質の最終判断
AIがチームで動くようになっても、人の役割がなくなるわけではありません。むしろ、人が担う部分がはっきりします。大きくは次の2つです。
何を作るかを決める
どんな顧客の、どんな課題に対して、どこまでの機能を作るのか。これは事業の目的に関わる判断で、責任を負うのは人です。AIは与えられた目的に沿って整理や提案はできますが、その事業をやる意味や、優先順位の決断までは任せられません。
新規事業では特にここが重要です。システムが事業そのものになる場合、「何を作るか」は事業の形をどう決めるかとほぼ同じ意味を持ちます。システム設計と事業の組み立ての関係は、「新規事業のシステム設計とビジネスモデルの作り方」で扱っています。
品質の最終判断をする
テスト役やレビュー役のAIが指摘を出しても、「この品質で出してよいか」を決めるのは人です。使い勝手が事業の狙いに合っているか、想定外の使われ方に耐えられるかといった判断には、事業の文脈への理解が必要になります。
AI駆動開発全体の役割分担や、発注側が押さえたい要点は、「AI駆動開発とは|AIと人の役割分担と発注側の要点」で整理しています。AIが工程の大部分を進めるほど、人が見る場所を絞って、確実に見ることが大切になります。
新規事業でAIチーム開発を使うときに確かめたい点
AIエージェントによる開発をうたう開発会社やサービスは、今後も増えていくと考えられます。「AIを使っている」という説明だけでは違いが分かりにくいため、発注を検討する側として確かめておきたい点を挙げます。
1. 動くものを早い段階で見られるか
AIで開発の速度が上がるなら、その分、実物を早く見て判断できるはずです。企画書や仕様書だけで進めるのではなく、動くプロトタイプで確かめられるかどうかは、大きな判断材料になります。言葉だけで決めた要件が、完成してから「思っていたものと違う」となる事態を避けやすくなるためです。この点は「システム開発の認識のズレを防ぐ、実物を見ながらのすり合わせ」で詳しく扱っています。
2. どの工程で人が確認するか
AIが進める部分と、人が判断する部分の境目が説明されているかを確かめます。「何を作るか」の合意と「品質の最終判断」に、人がどう関わるのかが明確であれば、安心して任せやすくなります。
3. AIに任せる基準や知見がどこから来ているか
同じLLMを使っていても、AIに与える役割の設計や品質基準によって、出てくる成果物は変わります。開発会社の経験や基準が、AIの設計やレビューにどう反映されているのかを聞いてみると、違いが見えてきます。
4. 作った後の運用はどうなるか
新規事業のシステムは、公開してから学び、手を加えていくものです。システムの維持や不具合修正、機能追加がどう続けられるのかも、開発時と同じくらい重要です。
5. 仕様が固まっていない段階でも相談できるか
新規事業では、最初から仕様が固まっていないのが普通です。構想の段階から一緒に整理できるかどうかも、確かめたいところです。外注全般の流れと失敗の防ぎ方は「システム開発の外注ガイド|依頼の流れと失敗の防ぎ方」に、アイデアを動くもので確かめる手順は「新規事業のアイデア検証方法|動くシステムで確かめる手順」に、プロトタイプの進め方は「MVP開発・プロトタイプ開発の進め方|新規事業の判断法」にまとめています。
なお、どのLLMが開発に向くかは、モデルの更新が早く、状況が変わり続けています。比較の視点は「開発向け生成AI比較|Claude・ChatGPT・Gemini」を参考にしてください。ただ、特定のモデルの優劣より、そのモデルをどんな役割と基準で組み合わせ、人がどこで確認するかという「チームの設計」のほうが、成果物の質に効いてくると私たちは考えています。
まとめ
複数の専門AIがチームで開発するとは、次のようなことです。
- AIエージェントは、目的を受けて手順を分解し、道具を使いながら作業を進める使い方である
- チーム開発では、要件定義・設計・DB設計・実装・テスト・レビューといった工程ごとに、役割と基準を与えた別々のAIが担当する
- 工程の間は成果物で受け渡し、食い違いがあれば差し戻す。記録が残るので判断をたどりやすい
- 役割を分けても、前提のずれや、もっともらしい誤りは残る。人の確認は引き続き必要である
- 人が担うのは「何を作るかを決めること」と「品質の最終判断」である
- 発注を考えるときは、動くものを早く見られるか、人がどこで確認するか、運用が続くかを確かめるとよい
私たちJustFitは、株式会社LEGAREAが運営する受託開発サービスで、LLMという「頭脳」に開発工程ごとの役割を与える独自の開発基盤「LAF(LEGAREA AI Framework)」を使い、複数の専門AIがチームとして開発を進めています。人が担うのは、何を作るかを決めることと品質の最終判断で、設計やレビューもLEGAREAの経験と品質基準にもとづいて行い、案件を重ねるごとに知見が加わっていきます。構想をもとに、約1ヶ月で実際に動くプロトタイプを先に用意し、実物を見てから契約を判断していただく進め方です。仕様が固まっていない段階でも相談できますので、詳しくはJustFitのサービス紹介をご覧ください。