マッチングサービス開発の進め方|最初に決める5つのこと
マッチングサービスの開発は、機能の一覧から入ると迷いやすい分野です。この記事では、新規事業としてマッチングサービスを立ち上げるときに、システムで最初に決めておきたい5つのことを整理します。あわせて、決めたことを動くプロトタイプで確かめながら進める流れも紹介します。
マッチングサービスは、システムがそのまま事業になる
マッチングサービスとは、サービスを提供したい側と、探している側を、オンライン上でつなぐ仕組みのことです。人材、スキルの共有、空きスペースの貸し借り、専門家への相談、BtoBの発注先探しなど、題材は幅広くあります。
どの題材にも共通するのは、利用者が二方向にいること、そしてシステムが「出会いの場」そのものになることです。検索のしやすさ、プロフィールの見せ方、申し込みから成立までの流れがそのまま事業の価値になります。この点で、システムが事業の中心になる新規事業の典型といえます。
一方で、マッチングサービスには、ほかの新規事業とは違う難しさもあります。
- 片側だけでは価値が出ない。探す人が少なければ提供する人は登録せず、提供する人が少なければ探す人は集まらない
- 成立した後の取引に、どこまで関わるかを決める必要がある
- 見知らぬ人どうしをつなぐため、信頼を担保する仕組みが要る
こうした事情から、「どんな機能を作るか」の前に、事業の形を決めておく必要があります。システムを軸に事業を組み立てる考え方は、新規事業のシステム設計とビジネスモデルの作り方でも整理しています。
システムで最初に決めたい5つのこと
画面や機能の細かい仕様より前に、次の5つを決めておくと、開発の迷いが大きく減ります。
1. 誰と誰をつなぐのか
最初に、提供する側と探す側を具体的に決めます。「個人事業主と企業」のような広い括りでは、プロフィールの項目も検索の条件も決まりません。たとえば「地方で営業を代行できる個人」と「営業担当がいない中小企業」のように、顔が浮かぶ粒度まで絞ります。
最初は、地域、業種、職種などで範囲を狭くしたほうが進めやすくなります。利用者が少数でも、出会いが起きる密度をつくりやすいためです。
あわせて、どちらの側を先に集めるかも決めておきます。先に集める側が決まると、最初に作り込む画面の優先順位が決まります。提供する側が少ない領域なら、提供する側の登録を軽くする工夫が先に必要になります。
2. 何をもって「マッチング成立」とするか
次に、成立の定義を決めます。成立といっても、次のように複数の考え方があります。
- メッセージのやり取りが始まった時点
- 日程の予約が確定した時点
- 見積もりの依頼が行われた時点
- 契約や決済まで完了した時点
この定義が決まると、必要な画面と、システムが持つ「状態」が決まります。状態とは、「申し込み中」「承認済み」「日程確定」「完了」のように、案件が今どの段階にあるかを表す区分のことです。状態が移り変わる順番をステータス遷移と呼びます。
成立の定義があいまいなまま進めると、あとから「承認は誰がするのか」「キャンセルされたらどうするのか」といった議論が次々に出てきます。まずは紙に矢印を書き、申し込みから完了までの流れを1本の線にしてみることをおすすめします。抜け漏れを防ぐ考え方は、要件定義とは?新規事業で抜け漏れとズレを防ぐ進め方で詳しく扱っています。
3. 信頼をどう担保するか
見知らぬ人どうしがつながる以上、信頼の仕組みはサービスの根幹になります。代表的な手段には次のものがあります。
- 本人確認や事業者確認
- プロフィールの記入内容を一定以上にそろえる
- 利用後のレビューや評価
- 通報やブロックの機能
- 運営による事前の審査
どこまで入れるかで、開発の量も、立ち上げの手間も変わります。最初は、運営が目で見て審査する運用にして、システムの機能は最小限にするという選択もあります。
もう一つ、早めに確認したいのが法令です。扱う領域によっては、許認可や届出が必要になる場合があります。たとえば、人材の紹介を行うなら職業安定法にもとづく許可が関わりますし、異性との出会いを目的とするサービスには、インターネット異性紹介事業の届出が関わります。個人情報を扱うため、個人情報保護法に沿った取り扱いも欠かせません。
どの規制に当たるかは、扱う領域や仕組みによって異なります。私たちはシステムの立場から、プロトタイプを作る前の段階で、所管の官公庁や専門家に確認しておくことが大切だと考えています。事業の形が変われば、必要な機能も変わるためです。
4. お金をどこで受け取るのか
収益モデルも、最初に決めたいことの一つです。マッチングサービスでよく見られる形には、次のようなものがあります。
- 成立ごとに手数料を受け取る
- 提供する側から、掲載や利用に対して月額で受け取る
- 目立つ位置への表示などのオプションで受け取る
- 広告で収益を得る
この選択は、システムのお金の流れに直結します。たとえば成立ごとの手数料なら、取引がシステムの中で完結している必要があります。決済をシステムに組み込むのか、それとも連絡先を交換した後はシステム外で取引されることをどう扱うのか、という設計が要ります。月額で受け取る形なら、成立の追跡は優先度が下がり、掲載の管理や契約の更新のほうが重要になります。
最初から収益化まで作り込む必要はない場合もあります。ただし、「将来ここで受け取る」と決めたうえで、それを妨げない作りにしておくことが重要です。後から決済や課金を足すとき、データの持ち方まで作り直しになることがあるためです。
5. 運営の手作業をどこまで残すか
立ち上げの時点で、すべてを自動化する必要はありません。たとえば、おすすめの相手の提案を運営が手作業で行い、システムは一覧と申し込みの画面だけを持つ、という始め方もあります。
ここで見落とされやすいのが、管理画面です。管理画面とは、運営側が会員や案件を確認し、修正や対応を行うための画面のことです。審査、通報への対応、問い合わせの確認、不適切な投稿の非表示など、運営の仕事の多くはここで行います。利用者向けの画面だけを作って管理画面がないと、立ち上げ後に運営が回らなくなります。
何を手作業で残し、何をシステムにするかは、最初に作る範囲の判断そのものです。範囲の絞り方は、MVP開発の機能の絞り方|最初に作るものと後回しの基準が参考になります。
決めたことを、動く実物で確かめる進め方
5つを決めても、それが正しいかどうかは、まだ分かりません。マッチングサービスは、検索の使い心地、申し込みの手順、プロフィールの見え方といった「触ってみて分かること」の影響が大きい事業です。企画書や画面の静止画だけでは、提供する側も探す側も、使うかどうかを判断しにくくなります。
そこで、次のような順序で進めると、決めたことを確かめやすくなります。
- 5つの決めごとを、1枚の資料にまとめる
- 成立までの流れに必要な最低限の画面を洗い出す(登録、一覧・検索、詳細、申し込み、承認、完了、管理画面など)
- 動くプロトタイプを作る
- 提供する側と探す側、双方の利用者候補に触ってもらう
- 反応を見て、作る範囲、成立の定義、収益の取り方を見直す
触ってもらうときに見たい点
プロトタイプを触ってもらうときは、感想を聞くだけでなく、見る点を決めておくと判断しやすくなります。
- 提供する側が、迷わずに登録項目を入力できるか
- 探す側が、求めている相手を見つけられるか
- 申し込みから成立までのどこで手が止まるか
- 運営の手作業がどれくらい発生しそうか
数字で判断する場合も、外部の統計に頼るより、自分たちで決めた基準を使うほうが実態に合います。たとえば「登録の途中でやめた人がどこで離れたか」といった、プロトタイプから直接得られる情報です。
この進め方は、新規事業の判断を小さな単位で重ねていく考え方に沿っています。詳しくは新規事業の開発は小さく作って確かめる投資判断の進め方や、新規事業のアイデア検証方法|動くシステムで確かめる手順で扱っています。また、プロトタイプ、MVP、モックの違いが気になる場合は、プロトタイプとMVP・モックの違いを整理を参照してください。
最近は、AIを使った開発によって、試作を作るまでの時間が短くなってきています。新規事業で何が変わるかについては、AI駆動開発で新規事業の立ち上げはどう変わるかにまとめています。ただし、速く作れることと、何を作るかを正しく決めることは別の話です。上の5つを決める作業は、開発の方法が変わっても残ります。
立ち上げで見落としやすい点
最後に、マッチングサービスの立ち上げで見落とされやすい点を挙げておきます。
最初の利用者を集める方法
システムが完成しても、利用者が自然に集まるとは限りません。最初の利用者を、知人の紹介、既存の取引先、業界の団体やコミュニティなど、どこから集めるのかは、システムとは別に考えておく必要があります。システムでできる補助としては、招待用のリンクや、公開前の事前登録ページなどがあります。
検索やおすすめ機能の作り込み
利用者が少ない段階で、高度な検索やおすすめ機能を作り込んでも、効果を確かめにくくなります。データが少なく、機能が働いているのか判断できないためです。まずは一覧と絞り込みなどの基本的な機能から始め、利用が増えてから高度化を検討するほうが、判断しやすくなります。
アプリにするか、Webにするか
最初はブラウザで使えるWebサービスで十分な場合が多くあります。ただし、利用のたびに通知が必要な事業など、アプリのほうが向く場合もあります。利用シーンから決めることが大切です。
仕様が固まっていない段階での進め方
ここまで読んで、「まだ仕様まで決まっていない」「社内にエンジニアがいない」と感じる場面もあるかもしれません。その場合は、仕様が決まってないシステム開発の相談は可能かや、新規事業でエンジニアいない会社の進め方が参考になります。開発を外部に頼む場合の見極め方は、システム開発会社の選び方|新規事業で失敗しない7つの視点にまとめています。
まとめ
マッチングサービスの開発は、画面や機能を並べる前に、事業の形を決めることから始まります。システムで最初に決めたいのは、次の5つです。
- 誰と誰をつなぐのか(先に集める側も含めて)
- 何をもって「マッチング成立」とするのか
- 信頼をどう担保するのか(法令の確認も含めて)
- お金をどこで受け取るのか
- 運営の手作業をどこまで残すのか
決めたあとは、動くプロトタイプを提供する側と探す側の双方に触ってもらい、反応を見て範囲や考え方を見直します。企画書だけで判断するより、実物で確かめたほうが、関係者の認識もそろいやすくなります。
JustFitは、株式会社LEGAREAが運営する完全オーダーメイドの受託開発サービスで、「先に作って、後から決める」という考え方をとっています。構想をもとに約1ヶ月で動くプロトタイプを開発し、実物を見てから契約するかを判断できます。仕様が固まっていない段階でも相談できますので、マッチングサービスの構想を形にしたいときは、JustFitのサービス紹介をご覧ください。