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新規事業で経営陣と現場がすれ違う原因は進め方のズレ

JustFit編集部(運営:株式会社LEGAREA)

新規事業で経営陣と現場の話が噛み合わないとき、原因は「目的の食い違い」ではなく「進め方のズレ」にあることが少なくありません。この記事では、すれ違いが起きる構造を「判断の材料」と「進める速度」の2点で整理します。そのうえで、動く実物(プロトタイプ)を見ながらすり合わせて、ズレを埋める考え方と手順を紹介します。

経営陣と現場のすれ違いは、どんな場面で起きるのか

新規事業に取り組む会社では、次のような場面がよくあります。

  • 現場の担当者が企画を練り込んで提案したが、経営陣から「もう少し詰めてから」と言われ、話が止まる
  • 経営陣が「スピード感を持って進めてほしい」と言うので動き出したが、途中で「聞いていた話と違う」と軌道修正が入る
  • 提案のたびに追加資料を求められ、検討が進んでいる実感が持てない
  • 経営陣は「現場が本気なのか分からない」、現場は「経営陣が本気なのか分からない」とお互いに感じている

こうした場面が続くと、「経営陣は新規事業に消極的だ」「現場は見通しが甘い」といった見方が生まれやすくなります。しかし、立場ごとに何が見えているのかを分けて考えると、別の姿が見えてきます。

現場の立案者の側から見えていること

現場で新規事業を立案する人は、顧客の声や業務の実情に近い場所にいます。「この課題は確かにある」「こういう仕組みがあれば使われるはずだ」という手応えを、日々の接点から得ています。

一方で、その手応えは言葉や資料にしにくい性質があります。自分の頭の中では完成形がイメージできていても、それを企画書に落とすと「何ができるのか」が伝わりにくくなります。立案者は「これほど説明しているのに、なぜ伝わらないのか」と感じやすい立場です。

決裁者の側から見えていること

経営陣や決裁者は、会社全体の資金・人材・優先順位を見ながら判断します。新規事業に投資する以上、失敗したときの影響や、他の事業との兼ね合いも考えなければなりません。

その際に手元にあるのは、多くの場合、企画書や数枚の資料です。資料から読み取れるのは計画と見込みで、実際に何ができあがるのかまでは分かりません。判断に必要な情報が足りないと感じれば、慎重になるのはごく自然な反応です。

このように、どちらも会社のためを思って動いています。それでも話が噛み合わないのは、二人が違うものを見て判断しているからです。

「目的のズレ」ではなく「進め方のズレ」と考える理由

すれ違いが起きると、つい「そもそも目指している方向が違うのではないか」と考えがちです。ところが、話をよく聞いてみると、経営陣も現場も「新しい事業で会社の次の柱をつくりたい」という点では一致していることが多いものです。

ズレているのは目的ではなく、そこへ向かう進め方です。具体的には、次の2点に分けて考えると整理しやすくなります。

判断の材料が違う

現場の立案者は、顧客との会話や現場での観察といった「肌で感じた情報」をもとに判断しています。経営陣は、資料や数字といった「文書化された情報」をもとに判断しています。

同じ案件を見ていても、材料が違えば結論が変わります。現場は「やる価値がある」と感じ、経営陣は「根拠がまだ足りない」と感じる、ということが起きます。どちらかが間違っているわけではなく、見ている材料が違うだけです。

進める速度が違う

新規事業は、市場の変化が速く、早く動くほど学べることが増えます。現場は「まず試したい」「動かしながら考えたい」という速度感を持ちやすくなります。

経営陣は、投資判断の責任を負う立場から、確認を重ねてから進めたいと考えます。これは慎重すぎるのではなく、役割上の速度です。

「まず試したい速度」と「確認してから進めたい速度」がぶつかると、現場は「止められた」と感じ、経営陣は「急かされた」と感じます。ここでも、争点は目的ではなく進め方です。

目的が共通だと分かれば、話し合いの焦点を変えられます。「どちらの考えが正しいか」ではなく、「お互いが納得して判断できる材料を、どう揃えるか」という問いに置き換えられるからです。

進め方のズレが生む典型的な行き違い

進め方のズレは、新規事業のシステム開発で特に表に出やすくなります。システムは形がなく、完成するまで実物を見られないからです。ここでは、よくある行き違いを3つ挙げます。

企画書の往復が終わらない

企画書で伝わらない部分を補うために、資料を厚くします。すると今度は、読む側が全体像をつかみにくくなります。質問が増え、追加資料を作り、また質問が来る、という往復が続きます。

この往復は、情報が足りないから起きるとは限りません。言葉と図だけでは、「実際に使ったときの感じ」が共有できないことが根本にあります。企画書だけで決裁を取ることの難しさについては、新規事業の決裁を企画書だけで取るのが難しい理由でも詳しく整理しています。

言葉だけで要件を決めて認識が違う

システム開発では、作る前に「要件」(何をどこまで実現するかの取り決め)を文章で固めるのが一般的です。ただし、言葉は人によって受け取り方が変わります。

たとえば「顧客が簡単に申し込める」という一文でも、現場は「3画面以内で完了する流れ」を思い浮かべ、経営陣は「既存の会員登録と連携した仕組み」を思い浮かべるかもしれません。文章の上では合意できていても、できあがったものを見て初めて「イメージと違う」と気づく、ということが起こります。

要件定義の抜け漏れやズレをどう防ぐかは、要件定義とは?新規事業で抜け漏れとズレを防ぐ進め方で解説しています。

費用と仕様を先に固めて、後から困る

社内で稟議を通すには、費用の見込みと仕様をある程度固める必要があります。ところが新規事業は、やってみないと分からないことが多い領域です。

仕様を先に固めると、あとから「実際に使ってみたら、ここは不要だった」「ここが足りなかった」と気づいたときに、変更しづらくなります。変更するには再度の説明と承認が必要になり、現場は動きにくくなります。経営陣から見ても、「聞いていた話と違う」という不信感につながります。

こうした「作ってみたら違った」という事態については、システム開発の認識のズレを防ぐ、実物を見ながらのすり合わせも参考になります。

3つの行き違いに共通するのは、「実物がないまま、言葉と資料だけで判断している」という点です。ここを変えるのが、進め方を見直すということです。

ズレを埋める方法:動くプロトタイプを見ながらすり合わせる

進め方を見直す具体策のひとつが、動くプロトタイプを先につくり、それを見ながら話を進める方法です。プロトタイプとは、本番とは違い、検証したい部分だけを実際に動く形にした試作品のことです。

実物が共通言語になる

動く実物があれば、経営陣も現場も、同じ画面を同じように見られます。「この画面のこの部分は、こうしたい」と指をさして話せるため、言葉の解釈の違いが入り込む余地が小さくなります。

現場にとっては、頭の中にあった完成形を、資料を厚くしなくても示せるという利点があります。経営陣にとっては、「何ができるのか」を実物で確かめたうえで、投資を続けるかどうかを判断できます。つまり、判断の材料が揃います。

実物を触ると、「ここは思っていたのと違う」「この機能は本当に必要か」といった、文章では気づきにくい指摘が出てきます。こうした指摘が早い段階で出れば、修正の手間も小さくて済みます。

判断の単位を小さくする

進める速度のズレも、プロトタイプで和らげられます。

「事業全体を承認するか」という大きな判断は、情報が足りないほど慎重になります。一方で、「まず短期間で試作品をつくり、見てから次を決める」という判断なら、経営陣も踏み出しやすくなります。現場から見ても、「止められた」のではなく「次の確認点が明確になった」と受け止められます。

判断の単位を小さくすると、経営陣の「確認してから進めたい」という速度と、現場の「まず試したい」という速度の両方を満たせます。どちらかが我慢するのではなく、進め方を変えて両立させる、ということです。

MVP(検証に必要な最小限の機能だけを備えた製品)やプロトタイプの進め方は、MVP開発・プロトタイプ開発の進め方|新規事業の判断法で詳しく紹介しています。アイデアを動くシステムで確かめる手順は、新規事業のアイデア検証方法|動くシステムで確かめる手順も参考になります。

今日から取り組める、進め方の整え方

プロトタイプをつくる前の段階でも、進め方を整えるためにできることがあります。ここでは、新規事業に取り組む会社が、経営陣と現場の間で確認しておくとよい点を挙げます。

1. 目的を一文で言葉にして、揃っているか確かめる

まず、「この新規事業で何を実現したいのか」を、経営陣と現場がそれぞれ一文で書き出し、見比べます。表現が違っても、方向が同じなら、目的は揃っていると判断できます。

もし目的が違っていたら、プロトタイプの前にそこを話し合う必要があります。逆に揃っているなら、残る課題は進め方だと整理できます。

2. 「何が分かれば判断できるか」を決裁者側から聞き出す

経営陣が慎重になるのは、判断に必要な材料が足りないからです。「何が分かれば、次に進めると考えられるか」を、あらかじめ聞いておきます。

「顧客が実際に使う流れを見たい」「運用の負荷がどの程度か知りたい」など、条件が具体的になれば、その材料を揃えるための試作品の範囲も決めやすくなります。

3. 検証したいことを絞る

プロトタイプで何でも確かめようとすると、範囲が広がって時間がかかります。「この事業が成り立つかを見極めるうえで、最も重要な仮説は何か」を絞り込みます。

たとえば、「顧客は、この申し込みの流れなら最後まで進むか」「社内の担当者は、この管理画面で運用できるか」といった問いです。検証したいことが明確なら、試作品に必要な機能も絞れます。

4. 見るタイミングを先に決める

経営陣と現場が一緒に実物を確認する時間を、あらかじめ設定しておきます。「途中で見せる」のではなく、「この日に一緒に見る」と決めておくことで、判断が先送りされにくくなります。

見る場には、立案者だけでなく決裁者も加わるのが理想です。報告を介さず、同じ実物を同じ場で見ることが、ズレを埋めるうえで大切です。

5. 見たあとに決めることを共有しておく

実物を見たあと、「続ける」「方向を変える」「見送る」のどれを選ぶのかを、あらかじめ共有しておきます。見送るという選択肢も含めて合意しておくと、検証が「承認を取るための儀式」ではなく、「判断のための材料づくり」になります。

システムをどのような形で事業に結びつけるかを考える際は、新規事業のシステム設計とビジネスモデルの作り方も参考になります。

プロトタイプを使うときの注意点

プロトタイプはズレを埋める有効な手段ですが、使い方を誤ると別の問題が生まれます。次の点には気をつけたいところです。

試作品を「完成品」と受け取らない

プロトタイプは、検証のための試作品です。見た目が整っているほど、「もうほぼ完成している」と受け取られがちですが、本番運用に必要なセキュリティや性能、運用の仕組みは、別途の設計と確認が必要です。

見せる側は「どこまでが試作で、本番に向けて何が残っているか」を伝え、見る側もその前提で確認することが大切です。

機能を盛り込みすぎない

実物が動くと、「これもほしい」「あれもできないか」と要望が膨らみやすくなります。要望が増えるほど、検証したかった本来の問いが見えにくくなります。

出てきた要望は、「次の段階で検討する項目」として記録しておき、今回のプロトタイプでは優先度の高いものに絞ると、判断がぶれにくくなります。

品質の確認は人が行う

近年は、AIを活用して開発を進めることも増えています。開発の速度が上がる一方で、できあがったものが意図どおりか、品質に問題がないかを確認する役割は、人が担う必要があります。この点は、AI開発でも品質には人の確認が必要な理由で整理しています。また、AI駆動開発の全体像と発注側が押さえたい要点は、AI駆動開発とは|AIと人の役割分担と発注側の要点をご覧ください。

外注先とも「進め方」を合わせる

開発を外部に依頼する場合、依頼先との進め方が合っているかも重要です。要件を先に固めて作り込む進め方もあれば、実物を早く見せて直していく進め方もあります。どちらが向くかは、新規事業の不確実さや社内の体制によって変わります。

依頼の流れや契約形態の違いは、受託開発とは?依頼の流れ・契約形態・新規事業の選び方やシステム開発の外注ガイド|依頼の流れと失敗の防ぎ方で確認できます。独自に作る部分と既存の仕組みを使う部分の見極めは、スクラッチ開発とは?新規事業で独自に作る部分の見極め方が参考になります。

まとめ

経営陣と現場が新規事業の場ですれ違うのは、多くの場合、どちらかの意欲や能力が足りないからではありません。ズレているのは目的ではなく、「判断の材料」と「進める速度」という進め方の部分です。

  • 現場は肌で感じた情報、経営陣は文書化された情報で判断しており、見ている材料が違う
  • 現場は「まず試したい」、経営陣は「確認してから進めたい」という、役割に応じた速度の違いがある
  • 企画書の往復、言葉だけの要件、費用と仕様の先決めは、実物がないまま判断することから生まれる
  • 動くプロトタイプを一緒に見ることで、共通の材料が揃い、判断の単位も小さくできる
  • 目的を揃え、検証したいことを絞り、見る場を先に決めておくと、すり合わせが進みやすい
  • プロトタイプは試作品であり、品質の確認や本番に向けた設計は別に必要になる

新規事業に取り組む私たちにとって、「誰が正しいか」を決めるより、「同じ実物を見て、同じ材料で判断できる状態をつくる」ことのほうが、前に進む近道になります。

JustFitは、株式会社LEGAREAが運営する完全オーダーメイドの受託開発サービスです。「先に作って、後から決める(PROTOTYPE FIRST)」という考え方のもと、構想をもとに約1ヶ月で実際に動くプロトタイプを開発し、実物を見てから契約を判断していただけます。仕様が固まっていない段階や、稟議を通す前の段階でも相談できます。経営陣と現場で見ている材料を揃えたいときの選択肢のひとつとして、JustFitのサービス紹介もご覧ください。

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