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スクラッチ開発とは?新規事業で独自に作る部分の見極め方

JustFit編集部(運営:株式会社LEGAREA)

スクラッチ開発とは、既製のパッケージやテンプレートに頼らず、要件に合わせてゼロから設計・実装するシステム開発のことです。この記事では、既製のサービスやノーコードとの違いを整理したうえで、新規事業で「独自に作る部分」と「既製品で済ませる部分」をどう見極めるかを解説します。外注を検討している経営者や担当者が、発注前に自社で判断できる状態になることを目指します。

スクラッチ開発とは何か

「ゼロから作る」の中身

スクラッチ(scratch)は「ひっかき傷」を意味する英語で、「from scratch」は「ゼロから始める」という慣用句です。システム開発でのスクラッチ開発は、既存のソフトウェアをカスタマイズするのではなく、画面、業務ロジック、データベースの構造、外部システムとの連携までを、要件に合わせて一から作ることを指します。

ここで押さえておきたいのは、「ゼロから作る」が「すべての部品を自前で書く」という意味ではないことです。実際のスクラッチ開発でも、プログラミング言語、フレームワーク、クラウド基盤、認証や決済などの外部サービスは、既存のものを組み合わせて使うのが一般的です。スクラッチと呼ばれるのは、システム全体の設計と、事業の中心になる機能を自分たちの要件で決められる開発のことです。

スクラッチ開発の特徴

  • 業務や事業の独自のルールを、そのままシステムに反映できる
  • 機能追加や仕様変更の自由度が高い
  • データの持ち方や画面の作りを、事業に合わせて設計できる
  • 一方で、要件を決める作業と、作ったあとの保守を自分たちで考える必要がある

自由度が高いことは長所ですが、決めるべきことが多いという負担にもなります。この二面性が、あとで触れる失敗の原因につながります。

既製のサービスやノーコードとの違い

システムを用意する方法は、大きく分けて三つあります。

方法 概要 向いている場面 注意点
既製のサービス(SaaS・パッケージ) すでに完成した機能を利用する 一般的な業務で、標準の機能で足りる場合 自社独自のルールや画面は、用意された範囲内でしか変えられない
ノーコード/ローコード 画面操作や少ないコードでアプリを組み立てる 小さく試したい、早く形にしたい場合 プラットフォームの仕様に沿った作りになり、複雑なロジックや大きな拡張には制約が出ることがある
スクラッチ開発 要件に合わせて一から設計・実装する 事業の独自性がシステムそのものに宿る場合 決めることが多く、進め方次第で認識のズレが起きやすい

既製のサービスの強みと限界

SaaS(インターネット経由で提供されるソフトウェアサービス)やパッケージは、多くの会社が共通して必要とする機能を、すでに完成した形で使えるのが強みです。会計、勤怠、顧客管理、メール配信など、どの会社でもやり方が大きく変わらない領域では、既製品を選ぶ方が合理的なことが多くあります。

限界は、「用意された機能の範囲で事業を合わせる」ことになる点です。自社の事業の独自性がまさに業務のやり方や顧客体験にある場合、既製品の枠に合わせるうちに、独自性が薄れてしまうことがあります。

ノーコードの強みと限界

ノーコードやローコードは、プログラミングの知識が少なくても、画面を組み合わせてアプリを作れるのが特長です。アイデアを小さく試す、社内の簡易なツールを作る、といった用途には向いています。

一方で、各プラットフォームが用意した部品と仕様の中で作ることになります。複雑な業務ルール、大量のデータ処理、他システムとの細かな連携、独自の課金や権限の仕組みなどが必要になると、制約に当たることがあります。また、事業が成長して仕様を変えたいときに、プラットフォームの都合に左右される点も、事前に理解しておきたいところです。どこまでが可能かは製品ごとに異なるため、選ぶ際は、公式ドキュメントで対応範囲や制限を確認することをおすすめします。

三つは対立するものではない

三つの方法は、どれかひとつを選ぶものとは限りません。会員管理は既製のサービス、事業の中核となる機能はスクラッチ、というように組み合わせるのが現実的です。大切なのは、「どこまで独自に作るか」を意識して決めることです。

新規事業でスクラッチ開発が向くのはどんなときか

新規事業のシステム開発の全体像は、新規事業のシステム開発の進め方|構想から運用までの全体像で整理しています。ここでは、スクラッチ開発という選択に絞って考えます。

向いているケース

  • システムそのものが事業の価値になる場合:たとえば、独自のマッチングの仕組み、独自の判定ロジック、特定業界向けの専門的なサービスなど、システムの動きが顧客に提供する価値の中心にあるケースです。
  • 既製品では業務の流れが再現できない場合:独自のフローや専門性の高い業務があり、標準機能に合わせると事業の狙いが変わってしまうケースです。
  • 将来の拡張を見据えて、データや仕組みを自社の資産にしたい場合:蓄積するデータの構造や、機能の増やし方を自分たちで決めたいケースです。

慎重に考えたいケース

  • 事業の仮説がまだ固まっておらず、顧客が本当に求めているかが分からない
  • 求める機能が、既製のサービスの標準機能で十分にまかなえる
  • 社内に、要件を決めて品質を判断する担当者がいない

とくに新規事業では、最初から大きなシステムを作るよりも、確かめたいことを絞って小さく形にする進め方の方が安全です。スクラッチ開発を選ぶ場合でも、「最初に作る範囲」を小さく区切ることが大切です。

独自に作る部分を見極める4つの問い

新規事業のシステムは、すべてをスクラッチにする必要はありません。むしろ、どこを独自に作り、どこを既製品に任せるかを切り分けることが、成否を分けます。次の4つの問いで整理してみてください。

問い1:それは顧客が選ぶ理由になっているか

顧客が「このサービスを選ぶ理由」に直結する機能は、独自に作る候補です。逆に、顧客がその存在をほとんど意識しない機能(ログイン、通知メール、請求書の発行など)は、既製品で十分なことが多くあります。

判断のコツは、自社のサービスを説明するときに、最初に挙げる特徴を書き出してみることです。その特徴を支える機能が、独自に作る中心部分です。

問い2:既製品で同じことができるか

独自に作りたい機能に見えても、実は既製のサービスで実現できることがあります。まず、市販のサービスや部品で代替できないかを確認します。代替できるなら、その方が早く、保守の負担も軽くなります。代替はできるが、細かい条件が合わないという場合は、どの条件が事業にとって譲れないのかを分けて考えます。

問い3:将来、変えたくなる可能性が高いか

新規事業では、顧客の反応を見ながら仕様を変えていくのが普通です。頻繁に変えたい部分、つまり事業の仮説そのものが入っている部分は、自由に変えられる形(スクラッチ)が向いています。逆に、変える予定のない定型の部分は、既製品に任せた方が安定します。

問い4:データを自社の資産として持ちたいか

事業が育つと、利用データは大きな価値になります。どんな形式でデータを持つか、他の機能や分析にどうつなげるかは、事業の将来に影響します。データの構造を自社で設計したい場合は、その周辺をスクラッチにする判断が合理的です。外部のサービスを使う場合も、データを取り出せるかどうか、乗り換えられるかどうかは、事前に確認しておく項目です。

見極めの結果を一枚にまとめる

4つの問いに答えたら、機能を次の3つに分類してみてください。

  1. 独自に作る:顧客が選ぶ理由になる、仮説が入っている、データの資産になる
  2. 既製品を使う:どの会社でも同じで、差別化に関わらない
  3. まず既製品やノーコードで試す:必要性がまだ確かめられていない

この一覧があるだけで、外注先との会話は具体的になります。「全部お任せで見積もりを」という相談よりも、範囲と優先順位が伝わり、認識のズレも起きにくくなります。

スクラッチ開発の外注で起きやすい失敗と防ぎ方

スクラッチ開発は自由度が高い分、外注では次のような事故が起きやすくなります。

言葉だけで要件を決めてしまう

企画書や仕様書は、書き手と読み手で解釈が分かれます。完成してから「イメージと違う」と気づくのは、外注で最もよくある失敗のひとつです。防ぐには、文章だけで合意するのではなく、動くものや画面イメージを見ながら確認する工程を、早い段階で入れることです。

費用と仕様を先に固めすぎる

要件が固まっていないまま、費用と仕様を確定させると、途中で「本当はこうしたかった」という変更が出たときに、調整が難しくなります。新規事業のように仮説が変わる前提の開発では、最初の範囲を小さくし、実物を見て判断できる余地を残しておく方が、双方にとって安全です。

作ったあとの運用を考えていない

システムは、公開してからが本番です。不具合の修正、利用状況を見ながらの機能追加、周辺の仕組みの更新など、運用の体制を最初から考えておく必要があります。「納品したら終わり」という前提で始めると、事業を育てる段階で困ることになります。

決める人と現場の見ている材料が違う

新規事業では、決裁者と現場の担当者が同じ目的を見ていても、判断に使う材料や進めたい速度が違うために話が噛み合わないことがあります。ズレているのは目的ではなく進め方であることが多く、実物を見ながら一緒に確認できる状態をつくることが、解決の近道です。

AI活用でスクラッチ開発の考え方はどう変わるか

近年は、生成AIを開発工程に取り入れる動きが広がっています。要件の整理、設計、コードの作成、テスト、レビューといった工程にAIを使うことで、最初の形を作るまでの負担が以前より小さくなってきています。AIモデルの動向については、Claude Sonnet 5.5の発表と新規事業への影響でも取り上げています。

ただし、AIが速く作れるようになっても、「何を作るか」を決める作業は変わりません。どの機能が事業の中心か、何を既製品に任せるかという見極めは、これまで以上に重要になります。作る速度が上がるほど、作るべきものを間違えたときの遠回りも大きくなるためです。また、AIが出力したものの品質を最終的に判断するのは人です。AIの活用は、見極めと判断の重みをなくすものではないと考えておく必要があります。

発注前に確認したいチェックリスト

  • 事業の価値の中心になる機能を、一言で説明できるか
  • 独自に作る部分、既製品を使う部分、まず試す部分に分類できているか
  • 最初に作る範囲を、確かめたいことに絞って小さく区切れているか
  • 実物を触りながら確認できる機会が、開発の早い段階にあるか
  • 公開後の運用や機能追加を、誰がどう進めるか決まっているか
  • データを取り出せるか、将来に別の仕組みへ移せるかを確認しているか

すべてに答えが出ていなくても構いません。答えが出ていない項目が、外注先と最初に話し合うべきテーマです。

まとめ

スクラッチ開発とは、既製品に合わせるのではなく、要件に合わせてシステムを一から設計・実装する方法です。自由度が高く、事業の独自性をそのまま形にできる一方、決めることが多く、進め方を誤ると認識のズレや遠回りにつながります。

  • 既製のサービスは、標準的な業務に向く。ノーコードは、小さく早く試すのに向く。スクラッチは、システムが事業の価値そのものになる場合に向く
  • 3つは対立せず、組み合わせて使うのが現実的
  • 独自に作る部分は、「顧客が選ぶ理由か」「既製品で代替できるか」「将来変える可能性が高いか」「データを資産にしたいか」の4つの問いで見極める
  • 外注では、言葉だけで要件を決めず、実物を見ながら確認できる進め方にすることが、失敗を避ける近道になる

JustFitは、株式会社LEGAREAが運営する完全オーダーメイドの受託開発サービスです。「先に作って、後から決める(PROTOTYPE FIRST)」という考え方で、構想をもとに約1ヶ月で動くプロトタイプを先に開発し、実物を見てから契約を判断していただけます。仕様が固まっていない段階でもご相談いただけますので、独自に作る部分の見極めから一緒に考えたい方は、JustFitのサービス紹介をご覧ください。

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